骨格の変形に対する外科矯正
顎変形症に対する外科矯正治療について
金額について(初診の方):
上下顎の骨格の形態不正のことを顎変形症といい、日本では保険治療の範囲となっています。3割負担で実質55-75万円程度となります。それとは別に当院では事前に自由診療でのかみあわせ治療を行っており、これは自費で60万程度が別途かかります。
治療の内容によっては初めからかみ合わせ治療と外科矯正治療共に自費扱いとなる場合があります。なお、厚生労働省の見解に基づき外科矯正の再治療は全額自費になります。
リスクについて :
(当院では難症例の受け入れ人数に限りがあり、病院の矯正歯科の受診を勧めることがあります。)
アゴのズレが大きい、出っ歯が大きいなどの患者様に関しては、外科をするにしろしないにしろ矯正自体が高リスクであると言えます。
リスクは①手術後の顎関節症・かみ合わせの不調和、②手術後に骨の後戻りによるあごのズレ、③口唇麻痺の残存、④容貌の悪化、⑤その他、があります。しかしながら手術適用の人が手術を行わないで矯正だけで改善を図る場合にも、大きく骨の中の歯を動かす必要があるため①歯根吸収により根っこが短くなりすぎて歯がグラグラするようになってしまう、②歯の根っこが骨からはみ出てしまう、③かみ合わせがズレて噛めなくなる、④見た目が悪化する、等の重篤な合併症のリスクがあります。アゴごとズレているような矯正が大変な人はどっちにしろリスクがあります。そういう場合相談の際はむげには出来ないので治療方法についての説明や受け答えはいたしますが、本心を言えばリスクの高い難しい矯正を受けることを勧めるよりも矯正をあきらめることを勧めたほうが患者さんに対しては良心的なのではないかと内心では感じることもあります。
手術方法について
上顎単独、下顎単独、下顎+オトガイ、上下顎、上下顎+オトガイ、あるいは下顎の骨が華奢な場合は上顎+オトガイといった組み合わせで、矯正の診断に合わせて決定されます。
上顎:Le fort I型骨切り術
上顎骨歯槽突起を中心に、上顎骨から前鼻棘、前歯部、臼歯部を一塊として移動させる。下鼻甲介までの上方移動が可能。上顎の場合、ほとんどこの術式が適用となる。high.traditional.stepの3通りがあり、いくつかのねじ穴が付いたチタン製プレートとチタン製ネジにより固定を行う。(生体吸収性のネジやプレートを使うこともある。)ネジは安定後、希望があれば撤去も可能。Y字に3ピース分割を行って歯列を拡大したり、U字に分割して上顎後退量、上方移動量を稼いだり、一次手術で上顎の真ん中を分割し、急速拡大装置を用いてからLe Fortを行う仮骨延長法(SAAPE)もある。
下顎:SSRO
下顎枝を矢状方向に分割する。現在最もポピュラーな方法。いくつかのねじ穴が付いたチタン製プレートとチタン製ネジにより固定を行う。(生体吸収性のネジやプレートを使うこともある。)下方からくさびを入れて自然にオトガイ管と後方を切断し、後方内側の骨をカットしないで残すshort splitは麻痺を残さず後戻りも少なく安全。また後方まで内側の骨をカットするtraditionalがある。
ネジは安定後、希望があれば撤去も可能。
下顎:IVRO
下顎枝を垂直方向に分割する。顎関節の問題が改善されやすいが、矢状分割法よりも切断面の治癒に時間がかかる。いくつかのねじ穴が付いたチタン製プレートとチタン製ネジにより固定を行う。(生体吸収性のネジやプレートを使うこともある。)ネジは安定後、希望があれば撤去も可能。
下顎:Obwegeser法
下顎を平行に切断する。昔主流だった方法で、骨が薄く麻痺が残る場合や顎骨の固定が難しい偏位に行われる。
下顎:オトガイ形成術(genio plasty)
下顎オトガイ部を切断し、前、上、下、側方方向に移動させる。下顎SSROが困難な場合、SSROを行わずオトガイ形成で代用することもある。いくつかのねじ穴が付いたチタン製プレートとチタン製ネジにより固定を行う。(生体吸収性のネジやプレートを使うこともある。)ネジは安定後、希望があれば撤去も可能。