矯正中の痛みとクリーニング
矯正治療の痛みとブラッシング
矯正期間中にお口の中が汚れていると、口腔内が酸性になったりばい菌が繁殖することで歯ぐきがが真っ赤になり、むし歯になるだけでなく痛みの感じやすさや矯正治療に影響が出てきます。Janus molecule 1: dichotomous effects of COMT in neuropathicvs nodceptive pain modalities.という論文によると、catechol-0-methyl-transferaseの遺伝子の違いによって痛みを感じる繊細さが異なることが分かっています。
特に元々歯ぐきが腫れやすい人は、口腔内の磨き残しによるばい菌も元々多く、矯正装置の周囲の汚れによって歯肉が赤く腫れてきます。麻酔の時に針を入れたときの痛み、麻酔を注入している時の痛みは、歯肉が腫れている人の方が敏感です。矯正治療で歯が動かされている際の痛みについても、歯肉が赤く腫れている人の方が、お口の中がきれいな人よりも敏感に痛みを感じます。また、歯を抜いた後の腫れや痛みについても、お口の中がきれいな人の方が少ないです。矯正の時に植立するアンカースクリューというピアスのようなインプラントがありますが、歯ぐきが腫れていると汚れもたまりやすく脱離の可能性が大きくなります。
歯ぐきが腫れやすい人は、知覚過敏で歯がしみる可能性も大きくなります。(ただし、知覚過敏はかみ合わせなどの影響もあるので、知覚過敏があるから歯ぐきが悪いというわけではありません。)
汚れがたまることにより、口腔粘膜も口内炎を起こしやすくなります。歯が汚れていると、装置の入っていないところでさえ口内炎を起こすことがあります。
一方でもともと痛みを感じやすい人というのもいます。こういう人は矯正で少し歯に力をかけただけでも痛みを感じます。このような場合、弱い力をかけて矯正するしかありません。
弱い力で矯正するために、通常の装置を用いるのではなく、セルフライゲーションブラケットという通常のブラケットの1/3という軽い力でも十分に歯が動くタイプの装置と、アンカースクリューという小さなネジを併用して矯正します。
セルフライゲーションブラケットはクリアブラケットの一種です。クリアブラケットは、セルフライゲーションと審美ブラケットに分けられ(同じクリアブラケットなのでどちらも料金は変わりません。)セルフライゲーションは審美ブラケットに比べてクリップがついている分見た目は劣りますが、治療期間は審美ブラケットよりも短い期間で済み、痛みも少ない特徴を持っています。当院でクリアブラケットでのご契約の場合には、どちらのブラケットで治療を行うかを選択することができます。
柔道、ラグビーなど投げられるスポーツの場合は、何かの拍子にブラケットが粘膜に当たり口内炎を惹起する可能性があります。また、少し話はそれますが矯正をするしないに関わらず、出っ歯の人の3人に1人は転んで前歯を折る経験をするという報告があります。
お口の環境を良くするには
それでは、歯ぐきの腫れを減らすにはどうしたらよいでしょうか。歯ぐきの腫れの原因は口呼吸による口腔乾燥、歯のがたがたによる清掃不良、歯の当たり具合の不調和や磨きすぎなどの物理的刺激による歯肉の退縮、(女性ホルモン、成長ホルモン、妊娠時の)ホルモンの影響、野菜などの栄養が欠乏しているためなどが考えられますが、以下に対処法を挙げてみます。
歯並びを整える
歯並びが整っていると、細かな部分までブラッシングをすることができるので、歯と歯の間に食べ物が詰まりにくく、虫歯や歯周病を回避できます。また、歯並びが良いと、大きく口を開けること、歯を見せて笑うことができるため、気持ちも明るく前向きになれます。
歯のクリーニングを行う
保険診療で、歯石の除去、PMTCといった歯のクリーニングを定期的に行い、汚れや細菌を徹底的に取る事で、むし歯や歯周病になりにくい環境をつくることができます。
口呼吸を減らす
寝たきりの人の方が口腔が乾燥しているのであっという間に汚れがたまったりしますし、よくしゃべる職業の人の方が前歯の歯ぐきが腫れやすいことが多く、また口呼吸が多い子どもの方が歯ぐきの腫れや汚れが多いことが見受けられます。子どもであればあごの関節の安定化によってオトガイ(アゴ先)を前方に成長させてお口を閉じやすくしたり、出っ歯などの歯並びの改善やお口をサポートする筋肉のトレーニングによって、口呼吸を減らす努力をするというよりも、呼吸を妨げている原因から改善し、呼吸様式自体を鼻呼吸に変化させることによってお口が閉じやすくなり、前歯の歯ぐきの腫れも自ずと改善してきます。
かみ合わせを整える
かみ合わせを正常化することによってよく当たる歯に対する負担が減少し、該当歯の歯肉退縮が改善します。
これらで気になる所があれば、矯正治療による歯並びの改善に加えて、
気になるところに応じたお口のトレーニングを行った方が良いでしょう。