生え替わり完了後に行う仕上げの治療(2期治療)
一般的に、生え替わり完了前の矯正治療のことを1期治療といい、生え替わり後の矯正治療を2期治療といいます。
1期治療が終わり経過観察中に前歯が押されてあちこち動いた歯並びについては、2期治療で仕上げをしていきます。
1期治療をしていたから必ずしも抜歯しなくて良くなるということではありません。無理な非抜歯矯正はあごの関節に負担をかけ、口元を悪化させます。そうなりそうな場合は2期治療での抜歯の可能性をお伝えします。1期治療では、狭いあごを無理ない範囲で広げ、あごの関節、あごの位置や形態の改善、口腔周囲筋のバランスや機能の改善をすることで、予防、すなわち骨格の「悪化の芽を摘む」ことが目的となりますが、
2期治療では、骨格の成長のピークにおいて口元やかみ合わせの資料を基に(非)抜歯部位の確定、永久歯のかみ合わせを確立することとなります。
1期治療でのかみ合わせの改善によって成長期にも変化する
上あごの前下方への成長に対して、あごの関節を中心とする下あごの成長が不足すると、下あごが回転し、口が開きやすくなり、下あごが下がり、あごの下(首すじ)が後退します(下図左)。それらによって舌位が下がりいびきや口呼吸をもたらします。
下の写真右から左への変化は1期が終わった直後から2期が終わったときの典型的な変化です。1期治療により、身長が伸びる2期治療期間中のあごの自然成長がなされます。
以下は、上記写真・下記レントゲン写真に関する解説です。
- 治療内容
- スプリント・マルチブラケット装置
- 治療費用
- 矯正治療基本料金 68.5~78.5万円
毎回の再診料4,400円(スプリント)5,500円(矯正)
- 抜歯の有無
- 上顎両側第一小臼歯抜歯
- 治療期間・回数
- 治療期間目安 スプリント+マルチブラケット 1年6ヶ月~3年0ヶ月
治療回数目安 18回~36回
- リスク・副作用
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スプリントは顎の関節を安静にして、顎の筋肉のバランスを整えて、顎の筋肉の成長に働きかける治療ですが、骨格の成長度合いには個人差がありますので、意図した通りに成長するわけではありません。
スプリントは著しく長期に使用した場合は、数年経過後に上顎前歯が前方へ傾斜する場合があります。
※ スプリント治療の方は、スプリント治療後に矯正を行います。(※ 個人差があります)
- 一般的なリスク・副作用(※要スクロール)
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(1)最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。
(2)歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
(3)装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
(4)治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
(5)歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
(6)ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
(7)ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
(8)治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
(9)治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
(10)様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
(11)歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
(12)矯正装置を誤飲する可能性があります。
(13)装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
(14)装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
(15)装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
(16)あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
(17)治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
(18)矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
スプリント(スタビライゼーションタイプ)のリスク及び副作用
効果には個人差があり、(1)めまい、(2)睡眠障害、(3)こわばり、(4)吐き気および/または嘔吐、(5)唾液分泌の増加、(6)咬合圧の増加、(7)口渇、(8)唇の乾燥、(9)いびきの増加がリスクおよび副作用として考えられます。
上記以外に、スプリントによって今までの噛み合わせ位置の変化およびそれによる顔貌の変化が生じるとその改善には矯正治療や外科的矯正治療が必要となります。
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あごの成長に伴う舌位と気道の改善
リラックスすると口唇が少し開く場合は、普段口唇を閉じるときに少しお口が緊張している証拠です。唇の幅の小ささや、唇の閉じにくさ・薄さを改善する、オトガイの前方回転により気道を拡大し鼻呼吸を確立する意図で、お口が閉じづらい人はあまりがたがたがなくても2期治療への移行に際して抜歯を計画することがあります。
2期の移行時期の決定
1期治療から継続して2期治療をいつ始めるかについては、12歳臼歯の萌出状況や種子骨のレントゲンの撮影結果(右図)をもとに、部活動や中学受験などを考慮して開始時期を決定します。