院内新聞
歯科矯正で使用するワイヤーの種類と使い分け
歯列矯正で使用するワイヤーは多様な種類、素材によって価格の違いがありますが、進行状況によって使い分けがなされているというのはご存じでしょうか?
主に下のように硬いワイヤー、形状記憶系、オールラウンド、その他の4つに分けられます。
<硬いワイヤー>
①オーストラリアンワイヤー
ステンレスに最初から焼きを入れており、非常に剛性の高い、なおかつ細い場合にはある程度の柔軟性のあるワイヤーです。歯列全体の形状を広げたい場合、歯列全体の形状をまっすぐにしたい場合、仕上げの際に有用です。
②ステンレススチール
鉄、アルミニウムの合金をステンレスといい、さびにくく軽く剛性が高い性質があります。最も伝統的なワイヤーですが、剛性が高いため現在でもかみ合わせの深さを浅くコントロールしたり仕上げの際には必須となります。ワイヤーを曲げてループを作って使用することもあります。リトラクション時(ループを曲げて少しづつ確実に歯を後ろに送る)や仕上げの際に使用します。
③エルジロイ
コバルトクロム合金のワイヤーで、剛性が高くステンレスよりも柔らかく、ばねの力が強いため痛みが少ない、生体に優しいワイヤーです。エルジロイは適度に柔らかく良いワイヤーですが流通量が少ないので、ステンレスで代用することも多いです。ワイヤーをループを作ったりして曲げて焼きを入れるとその状態で硬化し、変形しにくくなります。ループで少しづつ確実に歯を後ろに送る際や仕上げの際に使用します。
<形状記憶系>
④ニッケルチタン系
形状記憶なので、様々な使い分けにより思い通り歯列を動かすことができます。複雑ながたがたでも、初期はニッケルチタンのワイヤーで治していきます。低摩擦のワイヤーです。曲げることはできません。細いものは治療初期に、太いものは仕上げの際に使用します。もともとカールさせているワイヤーもあり、かみ合わせの深さをコントロール出来ます。
⑤ヒートアクチベート(ニッケルチタン)系
口腔外の温度ではふにゃふにゃですが、口腔内で入れておくとばねの力を発揮するワイヤーです。初期のがたがたの状態からまっすぐ並べるのに有用なワイヤーです。
⑥βチタン系
ニッケルチタン系の形状記憶合金で復元力が大きいにもかかわらず曲げることができるワイヤーです。また弱い力で歯の傾斜力を入れることもできます。部分的に大きな段差があったりする場合に、一回入れておくだけで持続的に段差を減らしていく力がかかります。
⑦チタンモリブデン系(ゴムメタル)
ニッケルチタンに近い柔らかさと、ベーターチタンのように曲げることができる性質を持ったワイヤーです。低摩擦で持続的に作用し、ベーターチタンに近いですが、より柔らかく同じ状態でもより太いワイヤーを入れることができます。比較的1本で適用範囲がひろいです。
<その他>
⑧マルチストランド系
8本編みなどが該当します。数本のワイヤーを編み込んでいます。柔らかく変形しやすいが多少の復元力があるので、仕上げ時に上下の歯を自然に噛ませたりする場合に使用します。
⑨ホワイトワイヤー
樹脂やロジウムでコーティングされた白いワイヤーで、中身はステンレス、ニッケルチタンがあります。オーストラリアン、エルジロイ、ヒートアクチベート、ベーターチタンはホワイトワイヤーがありません。ゴムメタルはオールラウンド系の中で唯一ホワイトワイヤーがありますが、非常に高額なワイヤーです。樹脂はコーティングがはがれる場合があり、樹脂による表面の摩擦があります。