舌と呼吸と歯並び
呼吸と歯並びの深い関係
あなたのお子様は、扁桃腺が腫れやすかったり、口呼吸をしていたり、鼻づまりを起こしていませんか? 呼吸は、かみ合わせに大きな影響を与え、顔の発育にだんだん影響してくることが一卵性双生児の報告で明らかとなっています。(下に双子の写真を示す。)
また、かみ合わせを良くすると、あごが正常に発育し舌が前に移動して口呼吸から鼻呼吸に自然に改善することで、ちょうど双子の写真の下の顔貌から上の顔貌への逆の変化も起こすことが可能です。(下の写真を参照)
治療前→治療後
以下は、上記写真に関する解説です。
- 治療内容
- 1期治療でツインブロック装置・拡大床、
2期治療で第一小臼歯4本抜歯+マルチブラケット装置(上下)
- 抜歯の有無
- 上下両側第一小臼歯抜歯
- 治療費用
- 矯正治療基本料金 1期 49.5万円、2期 27.5万円
毎回の再診料3,300円(1期)・5,500円(2期)
- 治療期間・回数
- 治療期間目安 1期 1年8ヶ月~6年
2期治療 1年3ヶ月~3年
治療回数目安20回~65回
- リスク・副作用
- 歯茎の状態や骨格の状態によって、顎先の変化を期待するのが難しい場合があります。(※ 個人差があります)
- 一般的なリスク・副作用(※要スクロール)
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(1)最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。
(2)歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
(3)装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
(4)治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
(5)歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
(6)ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
(7)ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
(8)治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
(9)治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
(10)様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
(11)歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
(12)矯正装置を誤飲する可能性があります。
(13)装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
(14)装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
(15)装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
(16)あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
(17)治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
(18)矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
スプリント(スタビライゼーションタイプ)のリスク及び副作用
効果には個人差があり、(1)めまい、(2)睡眠障害、(3)こわばり、(4)吐き気および/または嘔吐、(5)唾液分泌の増加、(6)咬合圧の増加、(7)口渇、(8)唇の乾燥、(9)いびきの増加がリスクおよび副作用として考えられます。
上記以外に、スプリントによって今までの噛み合わせ位置の変化およびそれによる顔貌の変化が生じるとその改善には矯正治療や外科的矯正治療が必要となります。
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正常な状態。口を閉じて舌は口蓋に位置し鼻呼吸が確立されている。そのため上顎と鼻腔の発育が正常になされ、閉口筋と開口筋のバランスが取れ、顔面高も正常に保たれる
- 正常な前歯は、舌と口唇との力のバランスのとれた位置にある。
- 通常の奥歯は、発育とともに、舌とほっぺたの筋肉との力のバランスがとれた場所に位置してしっかり噛み合ってくる。
- 【正常の呼吸の気道と舌の位置】
舌は厚みがあり、舌骨が上方にある。鼻で呼吸している。
気道(青)は、咽頭扁桃で5mm、口蓋扁桃で14mm以上の幅が確保されている。
口呼吸の場合。開口癖、口呼吸により上顎および鼻腔は狭く、高口蓋となる。顔面高が高く面長になり、アレルギー性鼻炎の合併や慢性的な鼻づまりを起こしやすい。アデノイド(咽頭扁桃)は鼓膜とつながっており、中耳炎を起こしたりしやすくなる。咀嚼筋が弱く、下唇が厚ぼったい。首筋がたるんでいる場合が多い。
- 口呼吸や指しゃぶりでは、舌の押し出す力と、口唇の閉じる力の不足によって前歯が前に倒れたり上下の前歯同士が開いてくる。
- 常に口が開いていることで上の歯列が狭くなり、かみ合わせに影響する。
- 【口呼吸患者の気道と舌の位置】
舌は平たく、低い位置にある。
扁桃腺がはれていると、上中咽頭腔が狭くなる。気道を確保するために舌を前に出し、口を開けて息をする。そのため噛む力が弱くなり、顔面の高さが高くなる。舌を下げる舌骨下筋群が緊張し、舌骨(灰色)が重力で下降している。口唇が乾燥し、紫色でぼてっとしている。
舌の動きが悪いと歯並びが悪くなる
臼歯の位置は、舌、咀嚼筋との力のバランスに影響される。開口癖で舌背が口蓋(こうがいと読む。つまり上あごのこと)に達していなかったり、頬筋や咬筋の力が過剰だと、上顎歯列弓と上顎歯槽弓は狭窄しやすいといわれている。
- 舌の中央に力が入り、凸ませることができる。
下顎歯列が広がり、下顎前突や上下の前歯が開いた状態を呈する。口呼吸、舌小帯の短縮や、筋力自体が低い問題を有する事も多い。サ行やタ行が言いにくいことも経験的に多い。
- 舌が下顎歯列を押すことで、下顎前突や開咬を誘発する。
- 舌が平坦で、運動時に凹んでおり、横方向に力が入る一方、凸ませることができない。
おいしく食べる為には
低位舌は、飲み込みの問題を起こすことがある。また、かみ合わせの悪さから、咀嚼方法に問題がある場合もある。
- 正常の飲み込み(嚥下運動)
舌は全体的に上方にあがり、舌の中央にしっかり食べ物を保持している。
鼻で呼吸している。気道は、咽頭扁桃で5mm、口蓋扁桃で14mm以上の幅が確保されている。
- 正しい咀嚼
咀嚼時に奥歯でしっかりすりつぶしている。
また、しっかりとこぼさずに、前歯でかみ切ることができる。
- 異常嚥下
嚥下時にも、舌の後方以外は低い位置にある。指しゃぶりや赤ん坊の吸啜と同様に、舌が前方に出て、飲み込むときに口の周りに力が入る。嚥下時に舌の上に食物を乗せるのが難しい。硬い物をよく噛めていないことが多い。
- 前方咀嚼癖
咀嚼時に奥歯ですりつぶすのが難しいときは、垂直にかみ切る運動しかできないので、噛むのに時間がかかったり、まっすぐにしかかみ切れなかったりする。そのような場合、手前の歯でくちゃくちゃ噛む音がする。
さらに前歯が離れていて、前歯でかみ切れない場合、食べこぼすこともある。
噛む力が強い場合の問題
くいしばりや歯ぎしりは、咀嚼筋の過緊張と筋肥大をもたらし、顎の骨格、かみ合わせや顎の関節に影響を及ぼします。
対策としては姿勢の改善と、意識して噛まないようにして頂くことが大切です。
噛めない子の問題
軟食の影響で噛む力がない人が増えております。日頃から噛んでいないということも、やはり顎の骨格に悪影響を及ぼします。このような場合はバイトプレートを用いた咀嚼訓練を行います。
咬筋が緊張していると、お口の周りの筋肉が緊張していることが多いです。
このような場合はあごの位置が不安定であごの関節に問題があることが多いです。
あごの輪郭がエラが張っている、口角の幅が短く口周りが緊張している、口唇の薄さなどは、当院のスプリント治療と矯正治療によって大きく改善します。
習慣的な噛みぐせがある人の例です。左の方が噛みやすいからといって左側に噛むことが多いと、お口を開け閉めするときに左側にあごがずれて運動するようになります。また、顎関節症になることもあります。噛んでいない側は頬がたるんでいます。このような場合は、右のほおづえ、うつぶせ寝(相当な力がかかります)をやめたり、右側で積極的に噛む様に心がけることが推奨されます。顔がゆがむということは、加齢と共に骨格も変化してきます。咀嚼していない側の下顎頭は細く華奢になり、噛む側の下顎頭は太くなり、下顎角の角度も左右差が生じてきます(右図)。また、あごの関節における外傷によってもあごの変形が起きます。さらに、6歳臼歯などの歯の生え方のタイミングや合わさり具合の不整によってもアゴの変形が起きる場合があり、注意が必要です。
舌と呼吸の問題がある場合には、ひどい場合にはアデノイド切除や舌小帯切除をおこなったり、そこまででなければ舌のトレーニング(MFT)や耳鼻咽喉科の受診で口腔機能発育におけるマイナス要因を改善することが勧められます。